一度は耳にしたことがあるであろう「ケリー」や「バーキン」。
これら伝説的なアイテムを生み出したブランドといえば、
言わずと知れた「エルメス(Hermès)」。
今回のスポットライトでは、
このブランドの中の王様と呼ばれているエルメスの魅力に迫り、
その奥深い世界をじっくり掘り下げていこう。
"伝説の始まりは1837年"
創業者である、
ティエリー・エルメス(Thierry Hermès)の苗字をとって、
貴族の馬車に使われる馬具を作っていた工房としてスタート。
アイコニックなロゴの馬車には乗客が描かれておらず、
「馬車を引く馬(エルメス)を操るのは顧客である」
というメッセージがこもっているシンボル。
エルメスの製品は顧客に寄り添い、
ライフスタイルを引き立てるものであることを意味する。
"ブランドを象徴するオレンジボックス、
偶然が運命に"

第二次世界大戦中、資材不足の影響で、
エルメスは従来のクリーム色の箱を使用できなくなり、
仕方なくオレンジ色の箱を採用することに。
しかし、その鮮やかな個性は瞬く間に注目を集め、
やがてエルメスの象徴となる。
偶然の選択が、運命の決断となったのである。
"エルメスを代表するアイテム"
#1 カレ(Carre)
エルメスがスカーフを作り始めたのは、
創業者一族の4代目であるロベール・デュマ(Robert Dumas)が、
1937年にブランドの新たな展開として提案したことがきっかけ。
最高品質のシルクで作られており、
芸術品のような複雑で美しいデザインが特徴。
#2 バッグ
1892年馬具の製造技術をもとに最初のバッグを製作。
この頃移動手段が馬車から汽車への過渡期と重なり、
エルメスは顧客からの「汽車で旅をするための鞄が欲しい」という要望に応え
馬具以外のアイテム製作にも乗り出す。
"そこで生まれたのが
オータクロア
(Haut à Courroies)"
これががきっかけとなり、
ファッションアイテムを展開するブランドとして
第一歩を踏み出すことになる。
その後、1903年には
女性用のバッグや財布などのファッショングッズ、
1927年には腕時計やファッション小物事業まで拡張していった。
"世界初のファスナー付きバッグ、
ボリード(Bolide)"
エルメスの「ボリード(Bolide)」バッグは、
1923年に世界初のジッパー付きバッグとして誕生。
創業者エミール=モーリス・エルメス(Emile・Maurice・Hermès)が
アメリカでジッパーの特許に着想を得てデザインしたもので、
旅行用バッグとして登場。
丸みを帯びたフォルムと実用性が特徴で、
現在でも幅広く愛され続けている定番アイテム。
"グレース・ケリーが選んだ、
時代を超えるエレガンス"
元ハリウッド女優であり、のちにモナコの公妃となった
「グレース・ケリー(Grace Kelly)」が
パパラッチのカメラにさらされたとき、
持っていたエルメスのサック・ア・クロアで
妊娠中のお腹を隠した写真はとても有名な話。
それをきっかけに、この1935年に登場したエルメスのバッグは
のち「ケリー(Kelly)」と呼ばれるようになる。
その他にも有名なバーキンやエブリン、
コンスタンス、エールバッグ、ピコタンなど
時代問わず愛され続けている名品がたくさん。
"エルメスは伝統を重んじながらも
時代に合わせて進化を遂げている"
エブリンについてはこちらをチェック
コンスタンスバッグについてはこちらをチェック
#3 シルバージュエリー
エルメスのシルバージュエリーが登場したのは1980年代。
シルバーを使用した繊細かつ洗練されたデザインが特徴。
特に、エルメスらしいクラフトマンシップと
シンプルでありながらも力強いデザインが評価されている。
"一つ一つに刻まれる、
真のラグジュアリー"
エルメスの製品には
アルファベットや数字も刻印されており
いつ、どの職人が作ったのかが分かるようになっている。
"エルメスはなぜ
愛され続けているか?"
エルメスの製品は、
「買った瞬間に価値が上がる」と言われている。
それは、バッグ1つ1つを1人の職人が
最初から最後まで手作業で作り上げるという
特別な製造過程によるもの。
つまり、そのバッグはただひとりのために作られた
「ハンドメイド」であるということ。
多くのブランドが企業の傘下に入りグループ化している中で
エルメスは長い歴史の中で単独企業として存在し続けている。
超消費社会の今の時代に、エルメスの揺るぎないこだわりが評価され、
価値を持ち続けているのだろう。